インタビューシリーズ第14回 崎村奏子さん
インタビューシリーズ第14回 JWLI2019年フェロー
崎村奏子さん
(楽天グループ株式会社 サステナビリティ部 ソーシャルイノベーショングループ マネージャー)
1、JWLIとのかかわりと学び
同じくJWLIフェローの丸野遥香さんや幸あかりさんとは企業の社会貢献担当というつながりがあって、JWLIのプログラムが素晴らしいと聞いていました。自分もチャンスがあれば行きたいと思い、2019年のフェローに応募しました。ボストンのプログラム中は毎日課題があって寝れないくらいでしたが(笑)、本当に多くの学びがありました。現地の団体訪問や毎週のレビュー、バブソン大学のプログラムなど…。特に、自分と同世代でがんばっている現地の団体と直接お話できて、それぞれの試行錯誤のストーリーを共有してもらえたことは、個人的にも学びが多かったです。
2、活動の内容とこれまでに乗り越えた危機・失敗
元々社会課題には関心があり、以前は新聞社で働いていました。東日本大震災の当時は九州の支社にいて、何もできない歯がゆさを感じました。新聞社自体がソーシャルセクターに近い立場にあると思うのですが、活動のお話を聞かせていただくことがあっても自分自身が具体的な活動をするということがあまりなかったんです。自分が活動する側に回りたいと思ったのと、企業がそれをやるということにインパクトがあると思って、現職に応募しました。日本企業のCSRは震災を機に大きく広がりました。最近はSDGsの影響もあり、それぞれの企業が本業の強みを活かして社会課題解決に取り組んでいます。私自身も様々な地域のNPOや自治体の方と一緒に活動することが増えてきて、これからは企業と非営利セクターの垣根がなくなっていくと感じています。
現職に就いてからの6年間、上手くいかなかったこともたくさんあります。でも、「あきらめるまでは失敗にならない」と自分に言い聞かせています(笑)。直近で大きな出来事はやはり新型コロナウイルスの流行です。オンラインでの募金活動など会社としてできることに取り組んだ一方、対面の活動が難しくなったことから社員のボランティア活動は大幅な方向転換を余儀なくされました。楽天には創業時から続く「エンパワーメント」という価値観があり、インターネットショッピングモールの「楽天市場」も「どんな地域からでも日本や世界を相手にビジネスができるようにする」というコンセプトで始まっています。社員のボランティア活動も、様々な地域に実際に足を運び、そこで出会う人との交流や対話を大切にしてきました。社員にとっても、自分たちの日々の仕事が社会とつながっている、という実感を得ることができる貴重な機会でしたが、それを対面の活動が困難な中でどう実現するのか、という点には悩みました。
結果として2020年は、試行錯誤しながらも、オンラインでいろんな地域の方とつながって協働することに挑戦しました。例えば岐阜県飛騨市の伝統工芸品「和ろうそく」を広めるオンラインイベントの企画を一緒にやったり。それから、国際協力NPOの未使用切手を仕分けするボランティアには、社員それぞれが自宅から参加しました。Zoomのビデオ通話を使って、作業しながらNPOの方からお話を聞く機会も設けました。そういった活動を通じて、一度も会ったことがなくてもオンラインで対話を重ねることで応援したい気持ちは強くなるし、オンラインでもできることがたくさんある、と気付くことができました。逆にボランティアのすそ野を広げるという意味では良かったと思います。今まで時間に制約がある人は現地に出向いての活動は難しかったですが、オンラインにすることで参加のハードルは下がりましたし、逆に実際に行くことの価値は上がると思います。これからはオンラインとオフライン、ハイブリッドの活動をしていきたいです。
3、これからやりたいと思っていること
私自身は、中間支援的なことや、社会的インパクト評価について、もっと経験を積みたいと思っています。私は企業の側にいて、いわばビジネスパーソンと社会をつなぐ役割を担っていますが、この「つなぐ」役割がこれからもっと大事になっていくと感じています。コーディネート力や活動のインパクトを可視化していく力を上げて、少しでも「つなぐ」ことに貢献できればと思います。
個人的な活動としても、ボランティアやプロボノに興味がある社会人とNPOをつなぐプラットフォームのようなものを実現したいと思っています。意識の高い人だけが集まるのではなくて、時間や場所の制約が外れるオンラインならではの関わり方を提案していきたいですね。コロナの影響もあり、オンラインやリモートでボランティアしたいという人も増えています。こんな時だからこそ社会人と非営利組織をマッチングできる仕組みを作りたいです。関わる人を増やしたいし、もっと多様な関わり方ができるようにしたいと思っています。例えばウェブでの情報発信など、広報を課題としている団体の方は多いのではないかと思うので、こうしたところからもビジネスパーソンとのマッチングが出来るのではないかと思っています。
4、座右の銘/大切にしている信条
今はコロナで難しいですが、直接その場に行ったり人の話を聞いたりして、自分なりに直接触れて感じるということは可能な限り大事にしたいです。新聞社で働いていた経験も影響しているのですが、本当に重要な情報はネットでは見つけられないことも多く、やっぱり直接見たり話を聞くのはそれだけの価値があると思っています。
ボストンでの学びで大きかったのは、特別な人だけではなくて誰でも自分で課題解決ができるということです。働きながら社会に貢献するとか、学生でも、それぞれの立場で貢献することができます。私自身、以前は会社の活動で、様々な地域の高校に行き、高校生と一緒に地域の課題解決に取り組むワークショップをやっていました。ほとんどの高校が東京から遠く離れた場所だったのですが、都会でビジネスコンペに出たりしなくても、どんな場所からでも、高校生でも社会を変えられるんだという空気を作りたいと思ってやっていました。これからも、誰もが課題解決の当事者になれるということを証明できるような活動をしていきたいです。
5、楽しい質問(好きなもの、こと等)
ビールが好き:クラフトビールは、海外・日本ともに大好きです。プログラム参加中はあまり飲めなかったのですが、ボストンは個性的なクラフトビールがいっぱいありました。また行きたいです!
6、インタビュワーYuki’s Comment
現地に赴くこと、直接お話を聞くことに重きを置きながら社員のプロボノ・ボランティア活動を支えてきた奏子さん。新型コロナウイルスによって相当に大変な思いをされたのではないかと伺うと、ケロリと「あきらめるまでは失敗にならないんで!」と笑顔でおっしゃっていました。非営利組織とボランティアを希望する社会人とのマッチングプラットフォームの構想については、今年中に具体化したいとのことで本当に心強く思いました。奏子さんの構想についての続報があれば、JWLIのフェイスブックなどでもぜひまたご紹介したいです。