インタビューシリーズ第12回 文本志麻さん
インタビューシリーズ第12回 JWLI2012年 文本志麻さん
文本志麻さん
(臨床心理士、NPO法人I am OKの会)
- JWLIとのかかわり
応募のきかっけは、JWLIフェローの櫻井啓子さんの旦那様です。以前職場が同じで、卒業後の夢についてお話したことがあり、紹介していただきました。大学院卒業直前で、まったく臨床心理士として社会貢献活動の経験を積んでいない状況で。卒業後、就職したばかりの会社で1か月以上もアメリカ行きを了承してもらうことは難しいかもしれないと思いましたが、会社に相談してみようと思い切って応募しました。
アメリカは、特にボストンだったからかもしれませんが、セーフティネットがたくさんあるんだなと感じました。日本にもいい活動をしているNPOはたくさんあるのに、資金繰りがうまくいかずに締めざるを得ない団体が多く、維持するためのノウハウを学びたいと思っていました。国の仕組みからしてアメリカとは多くの点で異なり、日本の状況の難しさを痛感しました。ボストンではどんどん自分たちで活動して、地域に還元しています。資金提供側も活動側もそうしているのを見て、日本でもそれが出来たらと思いました。アメリカの大学卒業後、日系企業で働いていた時、地域に根付いた会社にするために地域に還元する活動に参加したことがあります。そこまで裕福でなくても、自分のできる範囲で募金や寄付をしてくださる人が多いのですが、日本人は「いくら?」と聞いてくるのにはびっくりしました。けれど、最近はクラウドファンディングなどが一般化してきたし、募金に対する意識など高まってきたのがよかったなと思っています。NPOの活動はしやすくなっているのかなと。社会貢献の精神が日本にも根付いてきたのではないでしょうか。
- 何をやっているか/やってきたか
主に会社が運営する保育所、学童クラブ、児童館といった施設の子どもの巡回相談の業務に携わっています。施設からお子さんの発達や対応の仕方について相談の申し込みをいただいてから、お子さんを見に巡回に行くというのが今の仕事の流れです。
NPO法人I am OKの会には、有償ボランティアという立場で関わっていて、主に発達障害のお子さんの支援の一環として、小学生対象のSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)クラスの講師をしています。
元々子どもに関わる仕事をしたいと思っていました。子どもたちが出来ることが増えて、夢が持てるようにサポートする仕事がしたくて、大学時代はアメリカでEnglishを専攻し、ゆくゆくは発展途上国で子どもに英語を教えたいと思っていました。そんな中で、在学中にDV被害者のためのシェルターを訪問する機会があり、そこで出会った子どもたち、特に無表情で笑わない1歳くらいの赤ちゃんに衝撃を受けたんです。シェルターに来るような事情があるお子さんには情緒的な発達にも課題があり、この子たちが笑顔で日々が送れるような支援をしたいと思いました。当初、日本は恵まれた国だと思っていたので、発展途上国に目が向いていたのですが、日本でもアメリカと同じような困難を抱えた家族が増えてくることが予測されるけれど、アメリカのように十分な支援体制は整っていないし、情緒面でのサポートができる支援者は少ないと思いました。自国の子どもたちの力になりたいと思うようになり、臨床心理士の資格を取得するため、日本で仕事をしながら学費をためてから大学院に通いました。希望していた乳児院で勤めていた時には、保育士などの直接支援者や関係機関と連携し、様々な理由で情緒面と発達面で課題を抱えているお子さんと、さまざまな保護者や里親を支援する中でたくさんのことを学びました。この時期にNPO法人でのボランティア活動を開始し、発達障害のお子さんと、悩みを抱える保護者や保育者の支援を多く行ってきました。
「子どもたちが笑顔で過ごせる」というのが私の活動の目的です。「自分らしくいていいんだよ」というのを、子どもたちに感じてほしいし、周りの大人がそれを理解し受容できるようになることで、子どもたちの生きていくのがもうちょっと楽になっていくと思うので、これからもこの活動を続けていきたいと思っています。
- これからのビジョン、誰とつながりたいか
NPOのSSTクラスでボランティア活動を取り入れたいと思っています。発達障害のお子さんの多くは、自己肯定感がとても低いです。そんな子どもたちに自分にもできることや人の力になれることがたくさんあると感じてほしい。同時に、人を助ける活動の喜びを知ってほしいです。コロナ渦で、対面でのクラス運営が難しくなってきているので、オンラインで何が出来るか検討中です。非接触で出来る社会貢献活動の手法を知りたいです。元々、私のかかわっている子どもたちはコミュニケーションが苦手で、画面の前で集中して何かをやるのはとても難しいので…特に低学年のお子さんが興味をもって取り組める方法などについて、もし先駆的に取り組んでいる方やアイデアを持っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ教えてください!
- 提供できるスキル/強み
- 乳幼児から小学生までの子どもの発達に関して、保護者や子どもの身近な支援者である保育者などの相談にのり、見立て(乳幼児の発達検査含む)や、特性に合わせた支援方法・関わり方についてアドバイスできます
- 保護者が抱えている子育ての悩みなどを傾聴します(自分のパーソナリティとしてはアドバイスしがちですが、プロフェッショナルとしてはとことん話を聞くようにしています)
- 楽しい質問(趣味、好きな映画、嫌いな食べ物など)
- 身体を動かすのが好き:以前少し習っていた弓道や乗馬は機会があれば、またやりたいです。昨年はヨガを始めようと思ったのですが、コロナで通えず、今は家でストレッチしたり、週末は遠くまで散歩したり、動画を見ながら運動したりしています。
- 小説が好き:ミステリー
- 料理が好き:時間があればいろいろ作ります。気分転換になるので好きです。これとこれ混ぜたらどうなるかな、とかいろんなものを試しながらやるのが楽しいです。仕事でも変化がある方が好きですね。試行錯誤をしながら、新しいものが生まれるプロセスが好きです。人と話すのも、そこからの気づきやそこから新しく生まれてくるものがあるので、好きですね。
- インタビュアーYuki’s Comment
私自身がDV被害経験のある女性の支援をしてきた経歴があるので、暴力が子どもに与える影響を知り衝撃を受けたという志麻さんの言葉に深く納得をしました。子どもの心理によりそうことができる人材というのは、とても貴重だと思います!そこからさらに、子どもたちにボランティア経験を通して、自分も人の役に立てるという喜びを感じてほしいという志麻さんの描く未来のプロジェクトに共感!JWLIの中心的な価値観でもあるJoy of giving(与える喜び)ですね。オンラインの便利さと難しさに向き合いながら、今後のプロジェクトの発展に期待です。