JWLIスカラシップ設立 – 移民・難民の背景を持つ若者向け奨学金プログラム

JWLIエコシステム創設者 厚子・東光・フィッシュは、国際社会の担い手であり才能あふれた若い移民難民の背景を持つ方のための奨学金プログラム「JWLIスカラシップ」を日本において創設しました。彼女たち・彼らは多文化、多言語という背景から、今後の日本社会において重要な役割を担うと確信しています。

様々な支援活動・経験を有するJWLI卒業生らとの対話を通じ、「JWLIスカラシップ」の構想が生まれました。「JWLIスカラシップ」は大学・専門学校入学予定である移民・難民の若者に、最大4年間の入学金・学費・生活費を含む返済義務なしの給付型奨学金を提供します。

この度秋入試枠にて2名の奨学生が決定しました。2022年度入学者については、冬入試枠で残り2名が選出される予定です。なお、一般公募は行っておらず、アルムナイからの推薦者のみとしています。続きを読む

JWLI Ecosystem founder Atsuko Fish established the JWLI Scholarship for immigrants and refugees in Japan

JWLI Ecosystem founder Atsuko Fish established the JWLI Scholarship for immigrants and refugees in Japan. The JWLI Scholarship aims to foster leaders for a diverse Japan. Its goal is beyond a university diploma. The program honors the contributions of immigrants and refugees to Japan and celebrates their unique, multi-cultural potentials and talents. These individuals will not only bring diversity to university campuses, but also play an important role in transforming Japan to be more economically competitive, innovative, and compassionate. The JWLI Scholarship is unique and offered to those who are already based in Japan. The JWLI Scholarship offers a full tuition for four years with an annual living stipend. The inaugural cohort of four will start their undergraduate studies in April 2022. Read more.

インタビューシリーズ第19回 笠井誉子さん

インタビューシリーズ第19回 JWLI Bootcamp2019年卒業生

笠井誉子さん

NPO法人徳島の働く女性を元気にする会理事長 、株式会社reクラーレット代表取締役)

 

  1. JWLI Bootcampとの出会い(なぜ応募したか)

公益財団法人ジョイセフの吉留桂さんと、「ホワイトリボンラン(世界中の女性がより健康に、自分らしく生きることを支援する運動)」を通じて知り合い、桂さんがJWLIボストンプログラムの卒業生だったので、そこで初めてJWLIと言うものを知りました。その後、国際女性会議(WAW!)のセッションの一つでJWLI創設者の厚子・東光・フィッシュさんが登壇していて、その会場で JWLI Bootcampのチラシを見たのが直接のきっかけです。実施会場の名古屋は地元ではないのでダメかと思ったのですが、思い切って応募してみたら思いが通じました。

 

  1. 「これで私は変わった」/JWLI Bootcampで特に印象に残っていること

JWLI Bootcampが終わってから、迷わなくなりました。それまでは自分のやっていることは自己満足じゃないかとか、そんなことやって何になるのと言われて傷ついたり、やめようと思ったことも何度もありました。「徳島の女性はもともと元気なんだから、これ以上元気にならんでよろしい」と面と向かって言われたりして、自分たちのやっていることに意味を見出せなくなることもありました。でも、JWLI Bootcampで厚子さんの情熱に触発され、柴沼さんのこれからの未来の話や山川先生のアントレプレナーシップと失敗学に触れ…すべてがミックスされて、自分のやっている活動の方向性に確信が持てるようになりました。手弁当でやっていた活動も今では補助金を得たり、自主事業にもたくさんの方が参加してくださるようになりました。徳島県にもしっかりと活動の重要性を認めてもらい、一緒に女性支援を盛り上げていけるような関係性が出来ています。

 

  1. JWLI Bootcampをきっかけに、やり始めたこと、これからやりたいと思っていること

JWLI Bootcampの後、学んだことは全部自分の事業に取り入れてます。例えば、オリエンテーションの心構えや、参加者同士がお互いに褒め合い感謝を伝え合う「サンキューカード」は自主事業にも取り入れています。組織運営の質も上がりましたね。事業の在り方のお手本として、JWLIは私がこれからどこに向かっていくべきかを示してくれました。規模も分野も違うNPOのみなさんと一緒になって、共に学ぶ中で自分たちの今後のビジョンが見えてきたんです。

 

  1. JWLI Bootcampに興味を持っている方へ一言

私のように「自分なんかが入っていいのかな」と思っている人には、勇気を持って挑戦して欲しいです。絶対、あなたの世界が変わるから!全員知らない人同士でも、JWLI Bootcampではみんながあたたかく応援してくれます。今まで批判ばかりされてきた中で、応援してくれる人がいるというのはすごく嬉しいことです。JWLIコミュニティ内でいろいろな経験もできるし、他の卒業生をイベントの講師に呼んだり、仲間ができてすっごく楽しいです!そして、自分がJWLIで得たものをまた自分の団体のスタッフに還元していくこともできます。参加を迷われている方にもぜひ、こうした仲間を得られるJWLI Bootcampに参加して欲しいと思います。

 

  1. インタビュワー Yuki’s コメント

とにかくまだ見ぬ自分に出会いたいというポジティブな気持ちが溢れている誉子さん。人とつながるのも大得意で、周りの人を巻き込むのが誰よりも上手です。JWLI Bootcampを体験して迷いのなくなった誉子さんの未来創造の勢いは止まりません!NPO法人徳島の働く女性を元気にする会は、共催団体として JWLI Bootcampを徳島に呼んでくださり、2022年7月29日~31日(金土日)に開催予定です。詳しくは、JWLI Bootcampのウェブサイトをご覧ください。

インタビューシリーズ第18回 鈴木美苗さん

インタビューシリーズ第18回 Bootcamp Nagoya 2019年卒業生

 

鈴木美苗さん
(遊び場 学び場 てらす*1 創始者、合同会社学生ギルド代表社員)

 

1. Bootcampとの出会い(なぜ応募したか)

知人がフェイスブックでBootcampの情報をシェアしているのを見かけ、「迷ったらGOですよ」と書いてあり、「どうしよう、迷っちゃった!」と思いました。
大学院卒業後、公立フリースクールで不登校の子どもを支援していました。結婚をしてからは家業を手伝うべきと考え、子どもの支援はボランティアでと思っていました。ただ、私の心はずっと子どもの支援にあり、目の前に困った子どもを見かけ不登校の子どもを温かく見守る「遊び場学び場てらす」を立ち上げました。せっかく走り出した場を持続可能にするためにも学びたいと思い、Bootcampへの応募書類を書くだけでも書いてみようと決心しました。

 

2. 「これで私は変わった」/Bootcampで特に印象に残っていること

Bootcampは肌からしみいるようなエンパワメントの体験でした。これまでこんな体験をしたことがなかったので、新生児が1週間で倍の体重になるように成長できたと思います。JWLIの創設者の厚子さんが参加者のためを思って尽力してくださっている強い熱意、参加者のお互いに高め合おうというオープンな雰囲気…すべてに力をもらいました。
実は、Bootcamp参加前は自分のメールアドレスも持っていなくて夫のメールアドレスを借りていた状態でした。当日もいざスーツケースを持って出かけようとしたら、夫に「どこ行くの?!泊りなの?!」ってびっくりされて…事前に伝えてはいたのですが、私が本気ということがあまり理解されていなかったみたいでした。女性が何かしようとするときに夫、子ども、親…身近な人から止めが入るという話があります。でも結局、自分の中にも自分を止めようとする気持ちがあることに気づきました。これまでは、「家族を愛することは、自分がやりたいことを止めること」だと思っていたけれど、やりたいことを我慢する方向ではなく理解してもらえるように説明し自分が成長することがJWLIに対する恩返しと思えるようになりました。

 

3. Bootcampをきっかけに、やり始めたこと、これからやりたいと思っていること

Bootcampでのの学びを活かしてやったのが、フェスティバーレです。みんながそれぞれ自分の持ち味を生かしてできることを表現するおまつりです。出る人を応援し合う風土を作れ、ブートキャンプで私が感じたように参加者の多くはあの空間は別世界だったと表現してくれました。多くの方のはじめの一歩を応援できた場となりました。
フェスティバーレ後、JWLIの各種プログラム卒業生同士の交流イベントで、JWLIフェローの羽根田智子さんと出会いました。智子さんはNPO法人WROでロボコンを実施するなどSTEAM教育に関する活動を中心にやっていらっしゃいます。ちょうどフェスティバーレを企画した仲間にものづくりを得意とするメンバーがいたので、これなら私たちにもできると思い、2020年5月に子どもたちをプログラミング教育はじめ、同年12月には学生とのかかわりを通してエンパワメントする合同会社学生ギルドを立ち上げました。
Bootcamp名古屋のメンバーとは、未だに忘年会などで定期的に集まっています。みなさんがいつも「美苗さん、すごくいいプレゼンだったよ」などと褒めてくれて自信につながります。私ががんばることを応援し、喜んでくれる人がいる場を手に入れることが出来たのはBootcampのおかげです。

 

4. Bootcampに興味を持っている方へ一言

JWLIのコミュニティの存在がBootcampの3日間だけでなく、その後もずっと自分の活動に力を与えてくれています。私からのメッセージはひとつ。「迷ったらGOですよ」!絶対来てください。迷った時点でGOです。新しい見たことない世界を見に行くと思って飛び込んで!迷った時点で行きたいと思っているのだし、行けるかもしれないのだから、GOです!

 

5. インタビュワ―Yuki’sコメント

インタビュー中にも感極まって泣きながら語ってくださった美苗さんです。JWLIとして、美苗さんが自分のメールアドレスも持っていないところから、今やSTEAM教育を軸に会社を立ち上げていく美苗さんの旅を見守らせていただけて、本当にうれしく思います。子どもの支援を軸に、プログラミング教室に来る子どもはもちろんのこと、その企画段階で大学生のメンバーを力強くエンパワーし続けています。美苗さん率いる合同会社学生ギルドの活動を知ることのできるオンラインイベントが8月19日(木)20時より開催予定です。イベント詳細につきまして、こちらからご確認いただき、ぜひご参加いただければと思います。

 

*1 現在はオンラインコミュニティECLEC、名前と一部メンバーを変えて活動しています。

祝米寿!JWLI第1期生・平松昌子さんスペシャルインタビュー

平松昌⼦さん

(JWLI第1期生/認定NPO法⼈⽇本BPW連合会  前理事⻑)

 

  1. 米寿を迎え、その健康の秘訣は何ですか?

周囲の友人たちは、怒りのエネルギーが元気を支えているって言います。言われてみればいつも腹を立てているみたい。最近、肩に痛みを抱えていますけど、これまで四十肩とか五十腰とか知らずにきました。 多分親から、肉体労働に耐える丈夫な遺伝子をもらったのでしょうね。でも、体調維持には気を使っています。医療費がかかることが起きないようにおいしいものを食べるとか、疲れたと思えば休暇を取って旅行に行くとかです。若いころは仲間とスキーにでかけていましたけど、50歳を過ぎてテニスにかえました。足腰のパワー維持のためで個人コーチについてもらってます。ジムに行くよりテニスを選んだのは、下手なりに勝負ができるってことかな。「ガツン」とやり返せたときは超気持ちがいい。 どんな球を打てばいいか、考えることは頭の運動にもなるでしょ。

 

  1. 社会を変革する活動を継続するパッションは、どこから?

「女性たちのために」 をスローガンに掲げて活動してきた日本BPW連合会の理事長を、最近降りました。25年前定年で退職した時、誘われるままにこの活動に参加してのめりこみました。理由は会社員として働いた約35年間、「女性は損をしている!このままじゃまずい!何とかしなきゃ」という体験がそうさせたんです。管理職になって初めて参加した人事評価会議で、同期の男性と女性がその対象となった時、全員が議論もないまま男性を推したのです。この時、私は思わず「男性だからってプラスにするのはおかしい」 と発言して、評価が修正された体験もしました。その他にも女性という理由で、損をする事例がいっぱいあって、そのたびに腹を立ててきたわけです。

何かを変えようと思ったら、世間に訴えるという方法もあるけれど、訴えるだけではなかなか変わらない。法律の力が必要だということも学びました。例えば、選挙の投票でのクオータ制。多くの国で、女性議員を増やすことを目的として採用されており、日本でもと運動を始めました。議員会館で議員を招いて集会を開いたりして、2018年に「候補者男女均等法」の成立を実現したのですが、クオータ制としては不十分でした。それで、私達はもう一度体勢を立て直して、女性議員らと手をつなぎ、今年6月、法律の改正を実現したわけです。改正は女性候補者や議員が苦しんでいたハラスメントの防止や解決に、政党や国、地方自治体は、努めることという条文が入りました。ハラスメントへの怒りが、社会的に訴えることに始まり、次に法律に落とし込むことがやっぱり必要だと改めて学んだわけです。まだまだ問題提起しなければならないことがたくさんあります。頑張っていかなきゃね!

 

3.次世代の女性リーダーへ 

リーダーの役割って何かって最近考えることがあります。リーダーって、いろんな人も説得できるような視野や見識を持ち、日本ではあまり使われないけど、「人権」を自分のベースに置いて発言・行動できる人だと思う。嫌なことを強制されない社会を目指す人で、そのための方針と方向性を打ち出せる人。そして、行動の目標にきちんと優先順位をつけられる人。私は次世代を支える女性たちにお願いしたいこと、リーダーとしての能力を磨くと共に、目標として、あらゆる場面・あらゆる場所で、男女が50-50の社会づくりを掲げてほしいということです。

インタビューシリーズ第17回 熊仁美さん

インタビューシリーズ第17回 CCJA2018年入賞者

 

熊仁美さん

NPO法人ADDS 共同代表)

 

  1. JWLIとのかかわり

チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞(CCJA)では、入賞のメールを受け取って初めてCCJAについて知り、びっくりしました。ETICでお世話になっていた方に選考委員としてまたお会いすることになり嬉しかったです。わかりやすく表彰をいただく機会がなかったので、おめでとうとたくさんの方に言っていただきましたし、「これまで10年、しっかり活動を続けてきたから賞をもらえたんだから、誇りに思いなさい」と伝えてくれた方もいました。節目節目でお世話になった方たちからご連絡をいただけたのは嬉しかったです。

 

  1. これまでの活動、これまでに乗り越えた危機・失敗(活動の中での具体的なエピソード)

2006年に学生サークルを立ち上げたのがきっかけです。そこから2009年にNEC社会起業塾に入塾するタイミングで、起業をしました。もともと子どもが好きで大学では心理学を学ぼうと決めていましたし、子ども支援をしたいと思っていました。いろいろな心理療法を勉強して、自閉症の子どもに笑顔が増えました、などなどの報告を聞いて、それももちろんとても大事なのだけれど、「療育とかセラピーって、こういったあいまいな成果に対してお金を払うものなの?るのか」とびっくりしました。笑顔を増やすことが大事なのは当然なのですが、自分にとってそれを「セラピー」や「療育」ということに違和感があったんです。

そうした違和感の中で、応用行動分析(Applied Behavior Analysis; ABA)という心理学に出会いました。例えば、靴を履くのが難しいお子さんに、すごく細かくステップを踏んで靴が履けるよう導くなど具体的な解決への道筋が見えるものでした。ABAに基づいた療育はアメリカを中心にで発達してきており、自分が携わりたいのはこういうことことだと思いました。そんな時に、竹内が自閉症のある子どもの家に家庭教師に行っているというのを偶然聞いて、すぐに一緒に行き始めました。

10年ほど前、日本でこのABAに基づいた療育手法に着目し、広げようと頑張っていたのは親御さんたちの会でした。日本には専門家がほとんどいないので、海外から講師を呼んだり、自分たちで英語の資料を翻訳したりして、当事者の親御さんたちが自ら我が子の支援を担っている状態でした。学生セラピストを親御さん自ら教育して、我が子にABAに基づいた療育を受けてもらうという段階だったので、最初はむしろ親御さんたちから教えていただいて活動を続けてきました。この経験から、専門家主導じゃなく、親御さん主導のやり方というのが今も明確な信念として団体の中心にあります。

この手法を広げていく段階では、他の専門家に理解を得るのに苦労はありました。ですが、これまでの手法と違うところも多いけれど、共通点も同じくらいあるので、共通点を強調して仲間を増やしていっています。例えば、失敗して強くなるという考え方がありますが、失敗から学ぶことが出来る段階というのは、それまでに成功体験が積みあがっている段階です。最初から失敗させてしまっては、子どもたちは社会や人とやり取りをすることに喜びや楽しみを見いだせず苦労をすることがあります。ABAに基づいた療育では、「失敗させないような教え方」「失敗させないような学びのデザイン」を緻密にします。褒め方もひとりひとりに合ったやり方をします。誉め言葉や笑顔だけでは十分に伝わらない場合は、おやつやおもちゃも介在して他者とのやりとりに喜びを覚えてもらったり。まず、お子さんのやる気やモチベーションの引き上げ方まで含めてお伝えし、具体的な支援に取り組んでもらううと支援者も成果を感じられるので、この新しい方法も受け入れやすくなります。

 

  1. これからやりたいと思っていること

家庭で療育ができるようなプログラムを開発して効果検証をしていて、全国の民間療育機関のみなさんに実際に使って頂くところまでやってきました。今取り組んでいるのは、公的施設でこのノウハウを使ってもらうこと。民間施設は親御さん自身が質の高いサービスなどを探して初めてたどり着くものです。本来、効果的な支援は、自力でたどり着ける親子だけに届けばいいというものではないはず。公立のセンターであれば、例えば検診で指摘を受け、よくわからないままに、「言われたので来ました」という状態にある親御さんと出会うことができます。地域にエビデンスに基づいた療育を受けられるサービスが当たり前にあるというのが大切なので、これを広げていきたいと思っています。

日本は95%の子どもが検診を受けるという世界に誇れるシステムを持っていますが、その後のフォローが少ないのが課題です。現状は、検診での発見が子どもの利益になるというよりは、レッテルを貼られるというネガティブなイメージがあるように思います。検診の後の見通しが親御さんに伝わっていないことが、不安の1つの要因だと思います。オンラインの発達相談を立ち上げたのは、どんな時も安心して、発達のことを相談できる環境保証される仕組み作りが大事だと思ったからです。療育の前のちょっとしたサポートでその後がスムーズになるはずだと思います。

 

  1. 座右の銘/大切にしている信条

竹内と私は逆のタイプですね!私はあまり歯は食いしばらないほうです。笑 自分がやりたいことに忠実でいるほうが、パワーが発揮できるタイプです。我慢してやりたくないこともやるのが美徳、とか苦労は買ってでもしろ、といった考え方は害が大きいと思っています。発達障害の子どもたちと接する中で、強くそう思います。マジョリティによって一般的によしとされるルールの中で、我慢して過ごすことが、「君のためなんだ、社会に出たときに困らないためなんだ」と子どもたちは言われ続けています。そういう生き方は私自身もしんどいし、人にも子どもにも押し付けたくないんですね。社会全体で、違いに寛容な人が増えると、発達障害の子どもたち、ひいては私たちを含めたすべての人が生きやすくなるんじゃないですかね。自分のやりたいことで食いしばるのと、社会のルールに合わせようと食いしばるのは違うことだって思います。

NPOの立ち上げからお世話になっている川北先生に、社会起業塾の冒頭でガツンと言われた、「社会に良さそうなことをしたいのか?本当に社会を変えたいのか?」という言葉は、迷ったときに、常に問い続けている、大切な言葉です。「社会によさそうなこと」を自己満足でやるのではなく、本当に社会の変化に貢献できることをやりたいという想いは、組織全体の指針にもなっています。個人的には、「世の中8割はどうでもいいこと」という感覚も大事にしていて笑 大切な2割はしっかり意志を貫くけれど、あとの8割は優しく、寛容でいたい、と思っています。

 

  1. 楽しい質問
  • (好きなものや好きな人を教えてください、というインタビュワーの言葉に対して)息子が可愛くて、日々溺愛してます。フォルムからして、かわいい・・・!子どもって本当に心が美しくて、純粋に愛をくれるし、自分もそうありたいとお手本として崇めています。もちろん、子育てって大変だな、難しいな、という想いも日々感じていますが・・!
  • 4人で起業して10年くらいずっと仲良しでやっているのは何て幸せなことなんだろうと思っています。このコミュニティがあること自体がある種の富かもしれません。一方で、そういうコミュニティがない人も沢山いて、それはそれで多様性だと思っていますコミュニティの絆が強いことは、外とつながる機会を減らしてしまう、で広がりがもちにくい、といった弱みにもなりうる。でも後から作ろうと思っても作れないつながりだから、そこには改めて感謝をして、大切にしていきたいと思っています

 

  1. インタビュワーYuki’s Comment

第16回インタビューのNPO法人ADDS共同代表 竹内弓乃さんとは全く違うキャラクターで、「私は歯は食いしばらない!」と言っていた仁美さんでしたが、座右の銘が思いつかずにインタビュー後にお仲間に聞いてくださったら「機能重視」「言行一致」「行動あるのみ」など、かなりストイックな姿が浮かび上がってきました。パーソナリティのまったく違う二人の力がぴったりと合致して、ADDSを作り上げてきたのだなと強く感じました!理事との素晴らしいチームワークも、活動の秘訣の大きな要素だと思いました。

インタビューシリーズ第16回 竹内弓乃さん

インタビューシリーズ第16回 CCJA2018年入賞者

竹内弓乃さん
NPO法人ADDS 共同代表)

 

1. JWLIとのかかわり

チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞(CCJA)は他薦なので、入賞したというメールをいただいて、初めは何かの間違いかと思いました。授賞式では、以前助成金をいただいた時の審査側にいた方も来てくださっていました。CCJAチラシで私のことを見つけてくださり、わざわざ来てくださっていました。その後、個人的に寄付もいただきました。コロナもあるので会うことはありませんが、他の入賞者の方とつながれたのもいい刺激になっています。他の方が活躍しているのを見ると、勇気づけられます。

 

2. これまでの活動、これまでに乗り越えた危機・失敗(活動の中での具体的なエピソード)

私と熊が共同代表で、学生時代のゼミの後輩2人が理事にいます。KDDSという学生団体を熊と2人で立ち上げたのが始まりです。大学院の修士課程を修了した時に今のADDSを立ち上げました。熊と一緒に修士論文を提出して博士課程に行くつもりだったんですけれど、二人とも修論を書くのに一生懸命で博士課程に行く願書を出していなかったんです。指導教授に話もして、奨学金も約束されていたのに、事務的にもう入れませんとなってしまったんです。思い描いていた大学での研究がガラガラと音を立てて崩れましたね。3日くらいは落ち込んだんですが、願書を2人揃って出し忘れるなんて普通に考えてありえないから、何か今始めろと言うことだね、と。マンションの一室を日曜日だけ借りてADDSの活動をし、大学でも嘱託として働きながら、発達障害があるお子さんと親御さんと関わるプロジェクトを始めました。1年後に熊は博士課程に行って、私はキャリアが全く同じ2人で団体を運営するというのも幅がないかと思って、臨床心理学を学ぶために横浜国立大学大学院の臨床心理学コースに入りました。もちろんADDSの活動と大学院での研究活動は両輪で進めて、修士論文も博士論文もADDSをフィールドとして書き上げました。今思えば、願書の出し忘れがなかったらADDSが生まれるのはもっと遅かったし、生まれなかったかもしれないです。

そもそも発達障害があるお子さんと親御さんの支援という課題との出会いは、大学1年生の時でした。アルバイトを探していて、4歳の男の子と遊ぶ中で言葉を引き出すアルバイトというのを見つけました。その子が2歳で自閉症という診断を受けた子で。アメリカで診断をされていたので、自閉症の子どもの発達を促すためのプログラムをすでに受けたことがあったんです。日本に帰ってきてから同様の支援を得ようと思っても、日本では「自閉症」や「療育」という言葉さえほとんど知られていないような状況で、当然アメリカのようなサービスは無く、親御さんが近くの大学で学生アルバイトを探して、息子さんの家庭療育のセラピストに育てようということだったんです。家庭の中で早期から療育を行うことで起きるお子さんの大きな変化を目の当たりにし、私は現場の楽しさに夢中になってしまいました。アカデミックな裏付けも必要と思い、その後心理学を専攻して大学院に行きますが、狭い研究室の中だけでできることは限られているので、もっと現場でたくさんの親子に包括的な支援を届けたいと思いました。アメリカでは、自閉症への早期療育サービスがビジネスとして成り立っている地域もあって、アメリカの企業が日本支部として進出しているところもありました。でも、保護者がサービス利用料を全額負担するのが通常で、誰もが受けられるサービスではありませんでした。もちろんお金を払える人が質の高い支援を選んで受けるということは全く否定しませんが、私たちは、日本の社会制度や文化の中で、質の高い支援を誰もが受けられる仕組みを作りたいと思っています。

 

3. これからやりたいと思っていること

今までは、すでにある支援機関の質を高めたり維持したりするためのプログラムの開発だったり、その再現性を高めるためのシステムやネットワークづくりをしてきました。もちろんその支援枠がコロナで縮小してしまったことも問題でしたが、そういう人たちはもう支援につながっているんですよね。一方で、まだ支援につながってもいない方が、お子さんの発達が気になっていても気軽に相談できる状況じゃない。自治体の窓口に電話して、予約して、予約した日に小さな子を連れて初めての場所へ行くって、結構ハードルが高いです。勇気を出して相談しても、ハッキリ診断に至る年齢じゃなかったり、グレーゾーンで様子を見ましょうと言われたお子さんが、何か月も、場合によっては1年以上もそのままにされてしまうケースも珍しくありません。入口にまだまだ困っている人がいるだろうに、私たちはそこへのアプローチができていませんでした。コロナで多くの自治体で乳幼児健診が休止となり、相談の枠も縮小となり、子どもの発達を客観的に見て相談する機会がさらに減っています。オンラインで全国どこからでも気軽に専門家に相談できるサービスを作ろうということになり、去年6月から開発をしてきていて、今年の4月2日、自閉症啓発デーにリリースを出したばかりです。療育に既にがっつり向き合っていらっしゃる段階の親御さんにはもちろんこれまで通りしっかり質の高い支援をしますが、その前の段階にいる方にも支援を届けていく道筋を作りたいです。

 

4. 座右の銘/大切にしている信条

高校生頃からずっと「歯を食いしばる」だったんですけど、今改めて聞かれて考えてみると、今は変わってきてる感じがします。「歯を食いしばる」というのは、がむしゃらにやればストレッチが効くという意味で、やれるだけ根性でやり切るようなところがあります。努力しただけ返ってくる、それが未来につながるから、今もっとやらなければいけない。かといって私は常に努力を続けられるほど勤勉ではなくて、むしろ逆ですごく怠け者なので、できてない。できてないからもっと歯を食いしばろう…という繰り返しで(笑)それで得た成果もあると思いますが、今は自分の力をマックスにしたところで、一人だけの力じゃ大したことがないので、もっと組織の力だったり、仕組みを整えていくこと、いい仲間を引き込むこと、内部の人材をもっとエンパワーしていく、楽しく働ける環境を作ってパフォーマンスを上げてもらう方が大事なんだよなぁと実感しています。知識としてはわかっていたけれど、30代前半くらいまで腹落ちしていなかったと思います。でも今は、私は歯を食いしばってないですね。

(これは後日談ですが)インタビューを受けた後、「私はもう歯を食いしばってないって気づいた」と理事の原に話したら、釈然としない表情で少し考えて、「それは、弓乃さんが歯を食いしばらなくなったんじゃなくて、『歯を食いしばる』という言葉が弓乃さんに追いつかなくなったんじゃない?」と言われました。「歯とかじゃなくて、もう全身を自然に食いしばれてるよ」ということらしいです。長い付き合いの中で、お互いを深く多面的に洞察して言語化し合えるのは、私にとってすごく大事なコミュニティです。一人で食いしばるだけだったらとっくに辞めているかも知れません。組織を運営していると色々なことがありますが、理事のLINEグループで共有して、苦しいことも色んな側面から扱っていくとだんだん面白くなってきて、一晩でだいたいのことは消化できます。これは個人的にも現場の支援でも大事にしていることですが、色んなことをなるべく面白くポジティブに捉えなおすようにしています。

 

5. 楽しい質問

観劇が好き:

ミュージカル(日本だと劇団四季、コロナ前にはロンドンで「レ・ミゼラブル」を見ました)、スストレートプレイ等。大学で演劇のサークルに入っていて、その先輩がやっている劇団の公演に最近は行ったりしました。私はもうファンとして見る側なんですが、大学時代は役者や制作もやらせてもらったりして、その時の先輩や後輩が脚本家になっていたり映画をつくったりしていて、本当に刺激をもらいます。

 

6.    インタビュワーYuki’s Comment

「歯を食いしばる」という座右の銘がすぐに出てきた弓乃さん。聞いたときはビックリしましたが、その自分を追い込んで努力をして行くストイックな姿勢に、学生団体からNPOへと学業もありながら長く続けてきた秘訣があるのかなぁと思いました。次回発行のインタビューが共同代表の熊仁美さんなのですが、弓乃さんとは全く違った個性の方。2回分読んでいただくと、NPO法人ADDS共同代表コンビのバランスがわかって面白くなりそうです!

インタビューシリーズ第15回 谷岡理香さん

インタビューシリーズ第15回 JWLI2012年フェロー 
谷岡理香さん
一般社団法人青空朗読 代表理事、東海大学文化社会学部広報メディア学科教授)

1. JWLIとのかかわり

第1期生の平松昌子さんが日本女性放送者懇談会の先輩で、数年前からお誘いは受けていました。具体的なきっかけとしては2011年の東日本大震災です。あれほどの地震と津波の被害に対して何もできない無力感。それと元々アナウンサーで放送出身ですから、原発事故に関して報道が何か本当のことを言っていないのではという疑心暗鬼というかショックも受けました。(後から冷静に考えれば、当時分かっていないことも多かったでしょうし、実際には現地で取材を続けているジャーナリストたちがいたことも知ります。)当時は自分が立っていた足場が崩れた感じがありました。私と同じ思いを持った人は少なからずいたと思います。自分に何が出来るのか右往左往していました。その時にJWLIのことを思い出しボストンで非営利で社会に貢献している組織の活動を見てみたいと思ったのです。

主に暴力を受けた女性たちや貧困層の女性たちの支援を行なうNPO組織に行って、活動内容について説明を受けました。団体の活動を支える助成金の申請については本当に具体的に説明をしてもらい、更に貴重なデータの入ったUSBも持たせてもらうなど、現地のスタッフの誠実さに感動したことを覚えています。ですが、一方できわめて優秀な若い女性たちが、貧困層の女性たちをサポートする様子には自己犠牲的な要素を感じることもあり、志だけで行なうには厳しい側面を感じたことも事実です。

「活動を見たい」というのが目的だったこともあって、見て帰ってきてしまうという自分の甘さに気づきました。日本で見つけられないものをアメリカで見つけようと考えた自分の甘さです。 自分の足元のことは自分の足元でやらないと、どこか別の場所に探しに行っても得られないと気付きました。

関りとしては卒業生のみなさんと緩やかに繋がっていることも嬉しいことです。フェローの石本めぐみさん(特定非営利活動法人ウィメンズアイ)や吉留桂さん(公益財団法人 ジョイセフ)などの女性リーダーたちの活動を知ることで力をもらうことも度々あります。石本さんたちが主催したワークショップで、福島の若い農業の女性リーダーと知り合い、その後数回、彼女が営む農家民宿でゼミの合宿を行なっています。

 

2. これまでの活動、これまでに乗り越えた危機・失敗(活動の中での具体的なエピソード)

青空朗読を一般社団にしたのは2016年。年間50万円の企業スポンサーが現れたことで、法人化の必要が出てきたからです。医療関係のイベントを行なう会社です。青空朗読は小さな団体ですので、そのような支援をしていただくことに申し訳ない思いがあったのですが、「青空朗読」をサポートしていることが、自社のブランディングに繋がると言ってくださったことで自信を得たようにも思いました。

青空朗読はプロのアナウンサーらが朗読した作品(音声データ)を、インターネット上の「青空朗読」のサイトに掲載しています。インターネットにつなぐ環境さえあれば、誰でもいつでも朗読の世界にアクセスすることができます。その中で名著や童話に触れてもらっています。基本的には、個人個人に静かで豊かな時間を楽しんでいただくことが目的ですが、目の不自由な方や外国から日本に来ている方のための日本語教材としても活用されています。また、釧路市の学校で子どもの補助教材として使われていたり、高齢者施設で、リハビリや声を出す訓練教材として使われたりもしています。

豊富な音声があるサイトですので、企業から音声データとして売ってほしいという問い合わせをいただいたことも何度もあります。活動資金になると心が動いたこともありますが、思いを込めて朗読してくださる方々の声をデータとして売るのは私どもの活動の理念とは異なるので、断ってきました。

コロナ禍で出かけられなくなり、お問い合わせが増えました。その多くは地域の図書館ですが、香港の日本領事館からもサイトをリンクして良いですかとの連絡がありました。現在は毎日2000人ほどの方が青空朗読のホームページを訪れています。中にはイギリスやロシアなど、海外でこのサイトを訪れて朗読を楽しんでくださる方がいます。お金を出さなくても、自ら移動しなくても、つまり体が不自由な方や高齢で移動が難しい方も、名著や童話の世界に触れることができる。そういった公共のインフラになるといいなと思っています。

もう一つ、私の活動の柱はなんといっても大学の教員であることです。このコロナ禍で学生のケアは課題でした。残念ながら親御さんの経済事情で大学を辞めざるを得なかった学生や、オンラインに馴染めずに全く単位を取ることができなかった学生もいます。

振り返ると、教員の多くは同じ経験をしたと思いますが、春休みにいきなりオンラインの世界に放り込まれ、ひたすらパソコンに向かって慣れない授業の準備に追われていました。ZOOMって何?って感じでしたから(笑)。大学からは、当時は「ライブ授業は行わず、オンデマンドで授業準備をするよう」指示を受けていました。サーバーやセキュリティに対する懸念があったからでしょうし、とにかく何もわからない中にいたように思い出します。

ところが、4月に入り授業の初日に大学のサーバーそのものがダウンしてしまい、その日のNHKの夜7時のニュースにもなったんです。大学のオンライン授業がどのように始まるのかは社会的な関心事なのだと実感しました。でも私はこのサーバーダウンという、大きなトラブルを経験したことで、どのように準備しても、皆が初めて経験することなので、トラブルは付き物だと開き直りました(笑)。

大学生たちは大学への入構を禁止されていて友達にも会えていません。私は担当授業すべてをオンデマンドでなく、ライブのZOOMで行うことにしました。同僚からは「勇気あるなあ」と言われました(笑)。当時zoom bomber という名前のライブを荒らすトラブルがあるという話も出ていました。学生には何かトラブルが起こったらすぐに授業をいったん閉じる。と説明し、今年はそういう年なのでそれなりに対応していこうと授業の初めに話をしました。

技術的に不慣れなこともありましたが、学生に助けてもらいました。学生たちが画面越しながら、久しぶりに友達と会えて手を振りあう様子を見ると、ライブ授業に切り替えて良かったと思いました。大学は友人とコミュニケーションを取り合う大切な場所でもあります。チャットも個人同士の雑談もOKにして、学生同士がコミュニケーションを取りやすいように工夫しました。

何より大きな発見は対面での授業より、学生たちと密な対話が出来たことです。対面で100人を超える授業ですと後ろの席に座る学生は教員からは遠く、寝る気満々(笑)ですが、zoomだと教員と学生の距離は約30cmです。ジェンダーの授業の時に、この方法がうまくいったことを驚きと共に実感しました。大教室で学生は自分から手を上げることはほとんどありませんが、チャットなら喋ります。そのチャットも全員に届くのではなく私だけに送ってきます。つまり匿名性があります。最初の一人が意見を出すまでには時間がかかることもありますが、待ちます。私がそれを読み上げます。すると次々と学生たちから異なる自分の考えや反論、共感などがチャットで出てきたのです。経験したことのない教員としての喜びを実感した時間でした。バーチャルの空間ながら教室の体温が高くなった感じがしました。学生からも大学生になって一番いい授業だったと感想をもらいました。特にジェンダーについては、間違いか正しいかじゃなくて、自分の意見や思いを語ることが大切です。コロナ禍の緊急事態下の右往左往と模索の上のライブ授業でしたが、きっかけさえ提供すればこれだけ密な対話が出来るのだとわかったことは、困難の後に待っていた大きなご褒美でした。

 

3. これからやりたいと思っていること

ジャーナリズムに女性が少ないというのはずっと課題に思っていることです。

今年3月日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)と私が運営委員を務めるメディア総合研究所で、『もう、変えよう 「オトコ」目線のメディア』というシンポジウムをオンラインで開きました。中から変えるのは難しいので公開して、外からの風を入れようとしました。キックオフイベントです。約200人の参加者がありました。かつてメディアは内部のことを外には話さなかったし、労働組合がジェンダーのことを課題として掲げるのは初めての画期的なことです。複雑化している社会の中で男性主流のエリートの価値観によるニュースをニュースだと思っている現状を変えたいと思います。メディアが変われば与える影響は変わる。メディアを使って女性がどう発信できるか、今後も継続して考え、発信し、行動していきたいと思っています。

 

4. 座右の銘/大切にしている信条

学生にいつも伝えているのは、「ドアが閉まっていたらノックしてみて」ということ。ガラスの天井もあるし、行く先々でドアが閉まっていることもある。でもノックしてみたら外に人がいることに気づいて内側から返事をしてくれる人がいるかもしれない。簡単にあきらめないでほしいと伝えています。この考え方で、キー局のアナウンサーになった教え子がいます。彼女はすでに選考が終わってしまってから新たに就職活動をしなければいけない状況でした。でも、私のアドバイスを聞いて、全国の放送局に連絡をし続けていたら、在京のテレビ局から声がかかり、一年遅れで3年生と一緒に試験を受けて合格したのです。今、学生たちが、「メールして質問しても返事が無いんです」とか言うんですけれど、返事がないなら電話してみればいい。自分で動こうと言っています。

私自身も、これまで感動した映画には監督に手紙を書いて、やり取りを続けることもあります。また尊敬するジャーナリストに長い手紙を書いて一緒に仕事をさせていただいたこともあり、学生には直筆の手紙を書くことを勧めています。SNSの時代だからこそ直筆の手紙の価値があるようにも思います。

 

  • 5. 楽しい質問
    • ゲラゲラいうのが好き。生産性のないことを言って人を笑わせるのが好きです。くだらないことを言って涙を流すほど笑い転げる時間が一番楽しいですね。何で笑ったか後で全然覚えてないけど(笑)
    • 小さい時から家が嫌いで外が好きだったのですが、コロナで出られなくなってしまって。最近は家という空間と仲良くすることが出来るようになりました。ベランダの花やカーテンに話しかけたりしてます(笑)。
    • 50歳でクラシックバレエを始めました。白鳥の湖に出たときに、友達には「チャイコフスキーが気の毒」と言われました。その通り(笑)。できなかったことができるようになるのは嬉しいし、楽しい時間です。

 

6、インタビュワーYuki’s Comment

インタビュー時には、来週はJWLI第1期生の平松昌子さんとテニスに行くとおっしゃっていました。「私一人が素人なのよ」と笑っておっしゃっていましたが、理香さんの思い切りのよい性格がよくわかるスケジュールだなぁと思いました。危機的状況や失敗談について伺っても、そんなに大変なことはないとおっしゃっていましたが、これは逆境をチャンスにしてしまう理香さんならではの解釈かも?オンライン授業で出鼻をくじかれても逆に全部オンラインにし、生徒さんにも「途中で切れちゃうかもしれないけれど、それはそれだからね」と難しい状況もさらけ出して味方に付けちゃう様子も、理香さんならではの強みですね!ジェンダー不平等による生きづらさに関してはインタビュー後に世代を超えて意気投合してしまいましたが、現状をめげずに変えていきまし

インタビューシリーズ第14回 崎村奏子さん

インタビューシリーズ第14回 JWLI2019年フェロー

 

崎村奏子さん

(楽天グループ株式会社 サステナビリティ部 ソーシャルイノベーショングループ マネージャー)

 

1、JWLIとのかかわりと学び

同じくJWLIフェローの丸野遥香さんや幸あかりさんとは企業の社会貢献担当というつながりがあって、JWLIのプログラムが素晴らしいと聞いていました。自分もチャンスがあれば行きたいと思い、2019年のフェローに応募しました。ボストンのプログラム中は毎日課題があって寝れないくらいでしたが(笑)、本当に多くの学びがありました。現地の団体訪問や毎週のレビュー、バブソン大学のプログラムなど…。特に、自分と同世代でがんばっている現地の団体と直接お話できて、それぞれの試行錯誤のストーリーを共有してもらえたことは、個人的にも学びが多かったです。

 

2、活動の内容とこれまでに乗り越えた危機・失敗

元々社会課題には関心があり、以前は新聞社で働いていました。東日本大震災の当時は九州の支社にいて、何もできない歯がゆさを感じました。新聞社自体がソーシャルセクターに近い立場にあると思うのですが、活動のお話を聞かせていただくことがあっても自分自身が具体的な活動をするということがあまりなかったんです。自分が活動する側に回りたいと思ったのと、企業がそれをやるということにインパクトがあると思って、現職に応募しました。日本企業のCSRは震災を機に大きく広がりました。最近はSDGsの影響もあり、それぞれの企業が本業の強みを活かして社会課題解決に取り組んでいます。私自身も様々な地域のNPOや自治体の方と一緒に活動することが増えてきて、これからは企業と非営利セクターの垣根がなくなっていくと感じています。

現職に就いてからの6年間、上手くいかなかったこともたくさんあります。でも、「あきらめるまでは失敗にならない」と自分に言い聞かせています(笑)。直近で大きな出来事はやはり新型コロナウイルスの流行です。オンラインでの募金活動など会社としてできることに取り組んだ一方、対面の活動が難しくなったことから社員のボランティア活動は大幅な方向転換を余儀なくされました。楽天には創業時から続く「エンパワーメント」という価値観があり、インターネットショッピングモールの「楽天市場」も「どんな地域からでも日本や世界を相手にビジネスができるようにする」というコンセプトで始まっています。社員のボランティア活動も、様々な地域に実際に足を運び、そこで出会う人との交流や対話を大切にしてきました。社員にとっても、自分たちの日々の仕事が社会とつながっている、という実感を得ることができる貴重な機会でしたが、それを対面の活動が困難な中でどう実現するのか、という点には悩みました。

結果として2020年は、試行錯誤しながらも、オンラインでいろんな地域の方とつながって協働することに挑戦しました。例えば岐阜県飛騨市の伝統工芸品「和ろうそく」を広めるオンラインイベントの企画を一緒にやったり。それから、国際協力NPOの未使用切手を仕分けするボランティアには、社員それぞれが自宅から参加しました。Zoomのビデオ通話を使って、作業しながらNPOの方からお話を聞く機会も設けました。そういった活動を通じて、一度も会ったことがなくてもオンラインで対話を重ねることで応援したい気持ちは強くなるし、オンラインでもできることがたくさんある、と気付くことができました。逆にボランティアのすそ野を広げるという意味では良かったと思います。今まで時間に制約がある人は現地に出向いての活動は難しかったですが、オンラインにすることで参加のハードルは下がりましたし、逆に実際に行くことの価値は上がると思います。これからはオンラインとオフライン、ハイブリッドの活動をしていきたいです。

 

3、これからやりたいと思っていること

私自身は、中間支援的なことや、社会的インパクト評価について、もっと経験を積みたいと思っています。私は企業の側にいて、いわばビジネスパーソンと社会をつなぐ役割を担っていますが、この「つなぐ」役割がこれからもっと大事になっていくと感じています。コーディネート力や活動のインパクトを可視化していく力を上げて、少しでも「つなぐ」ことに貢献できればと思います。

個人的な活動としても、ボランティアやプロボノに興味がある社会人とNPOをつなぐプラットフォームのようなものを実現したいと思っています。意識の高い人だけが集まるのではなくて、時間や場所の制約が外れるオンラインならではの関わり方を提案していきたいですね。コロナの影響もあり、オンラインやリモートでボランティアしたいという人も増えています。こんな時だからこそ社会人と非営利組織をマッチングできる仕組みを作りたいです。関わる人を増やしたいし、もっと多様な関わり方ができるようにしたいと思っています。例えばウェブでの情報発信など、広報を課題としている団体の方は多いのではないかと思うので、こうしたところからもビジネスパーソンとのマッチングが出来るのではないかと思っています。

 

4、座右の銘/大切にしている信条

今はコロナで難しいですが、直接その場に行ったり人の話を聞いたりして、自分なりに直接触れて感じるということは可能な限り大事にしたいです。新聞社で働いていた経験も影響しているのですが、本当に重要な情報はネットでは見つけられないことも多く、やっぱり直接見たり話を聞くのはそれだけの価値があると思っています。

ボストンでの学びで大きかったのは、特別な人だけではなくて誰でも自分で課題解決ができるということです。働きながら社会に貢献するとか、学生でも、それぞれの立場で貢献することができます。私自身、以前は会社の活動で、様々な地域の高校に行き、高校生と一緒に地域の課題解決に取り組むワークショップをやっていました。ほとんどの高校が東京から遠く離れた場所だったのですが、都会でビジネスコンペに出たりしなくても、どんな場所からでも、高校生でも社会を変えられるんだという空気を作りたいと思ってやっていました。これからも、誰もが課題解決の当事者になれるということを証明できるような活動をしていきたいです。

 

5、楽しい質問(好きなもの、こと等)

ビールが好き:クラフトビールは、海外・日本ともに大好きです。プログラム参加中はあまり飲めなかったのですが、ボストンは個性的なクラフトビールがいっぱいありました。また行きたいです!

 

6、インタビュワーYuki’s Comment

現地に赴くこと、直接お話を聞くことに重きを置きながら社員のプロボノ・ボランティア活動を支えてきた奏子さん。新型コロナウイルスによって相当に大変な思いをされたのではないかと伺うと、ケロリと「あきらめるまでは失敗にならないんで!」と笑顔でおっしゃっていました。非営利組織とボランティアを希望する社会人とのマッチングプラットフォームの構想については、今年中に具体化したいとのことで本当に心強く思いました。奏子さんの構想についての続報があれば、JWLIのフェイスブックなどでもぜひまたご紹介したいです。

Atsuko Fish Statement Against Anti-Asian Racism

Recently, out for a walk along a narrow road on Cape Cod, I passed a family wearing no masks. I asked them, “Where are your masks?”  The father turned to me and said harshly, “Go home.” On another occasion I was out walking, followed by young girl on her bike. She asked where I lived, so I pointed out my house. As she stopped and watched me go towards my front door she said “No. You don’t belong here.”

 

My name is Atsuko Toko Fish. I am originally from Japan. I came to Boston in 1983 when I was 40 years old and 7 months pregnant, with my husband and 3-year-old daughter. I have been fortunate and am proud of the life I have created in the U.S. I am also proud of my legacy as an Asian woman and a descendent of a Samurai family. I strongly condemn anti-Asian attacks targeting our community, especially women, youth, and the elderly. I am writing this letter to urge you to use your voice and stand with me in collective action.

 

My husband Larry and I created a family foundation in 1999. The Foundation serves immigrants in Massachusetts, an area I care deeply about as an immigrant myself; high and proven-risk youth; and leadership development for women in Japan. In Japan we have over 100 alumnae. They are women non-profit leaders making major strides towards social change. In my 10-year role as chair of the board of the Asian Task Force Against Domestic Violence (ATASK), I have served Asian women and children who were survivors of domestic violence and other forms of violence. I treasure my work with ATASK’s staff and clients, but it is a reminder of this country’s long history of systemic racism and gender-based violence.

 

As an Asian woman, I too have been a target of discrimination and racism. On the street and in the workplace. These experiences are deeply rooted in misogyny and hypersexualization. My fellow Asian women, this is our chance to break our silence. We must use this moment for good, as an opportunity to raise awareness of this issue. We now have the power to change the course of our future and respond. Let us speak up and show our strength. As role models to girls and young women, we must teach by example and show how proud we are of our heritage and rich cultures. America is the land of opportunity, a place where we are welcomed and have a chance to thrive.

 

I urge you to join me in collective action. We can make a difference in our future together.

 

Atsuko Toko Fish

Co-Founder, The Fish Family Foundation
Founder, Japanese Women’s Leadership Initiative Ecosystem

 

【以下日本語訳】

先日、道ばたでマスクをしていない家族とすれ違ました。私が「マスクはどうしたんですか?」と尋ねると、父親が厳しい口調で「国に帰れ!」と私に向かって言いました。また、別の日には自転車に乗った女の子に後をつけられ、どこに住んでいるのかと尋ねられました。私が自分の家を指さして玄関に向かっていくと、「あんたはこの国に住むべき人でないでしょ!」と言われました。

私は日本出身で妊娠7か月で40歳だった1983年に、夫と3歳の娘と一緒にボストンに移り住みました。私はアメリカで築いてきた生活に誇りを持っています。そして、私はアジア人女性として、そしてまた日本の武家の子孫として、自分が受け継いできた文化と歴史に誇りを持っています。私たちアジア人に向けられた暴力―特に女性や若者、そして高齢者に対する暴力―に強く抗議します。共に声を上げ行動を起こしましょう。そのために、このメッセージを書く決断をしました。

夫のラリーと共に、フィッシュ・ファミリー財団を米国ボストンで1999年に立ち上げました。財団では、マサチューセッツ州に住む移民の支援、社会的困難な状況に置かれているハイリスクな若者支援、そして日本の女性リーダー育成事業をしています。特に移民支援は、私自身が移民であることから、非常に重要な支援です。日本の女性リーダー育成事業では、100名以上の卒業生を輩出しました。彼女たちは、社会変革に向けて大きな成果を上げている非営利活動に従事する女性リーダーたちです。また、Asian Task Force Against Domestic Violence (ATASK)で理事長を10年間務め、ドメスティック・バイオレンスなどの暴力被害を受けたサバイバーのアジア人女性や子どもの支援をしてきました。ATASKの職員やクライアントとの活動経験は私にとっての貴重な経験となっていますが、それは同時にこの国に刻まれた構造的人種差別とジェンダーに基づく暴力の歴史を思い起こさせるものでもあります。

アジア人女性として、私自身も路上やその他の場所で人種差別の対象になったことがあります。こうした経験の根底にあるのは、女性蔑視と、アジア人女性を過剰に性的対象とみる差別的意識です。同じアジア人の女性として、私はみなさんに呼びかけます。今がまさにこの沈黙を破る時です。現状を打開し、この問題について広く世界に知らしめる機会なのです。私たちは今、未来を変える力を持っています。その力を発揮し声を上げましょう。若い女性や女の子のロールモデルとして、私たちのルーツと豊かな文化を誇りに思っていることを身をもって示すのです。アメリカは、誰もが歓迎され、成功する機会が与えられる国なのだから。

共に行動を起こしましょう。私たちは今、歴史を作り、未来を変えようとしています。私たちは変化をもたらすことが出来るのです。We can make a difference!

フィッシュ・ファミリー財団共同創設者
JWLIエコシステム創設者
厚子・東光・フィッシュ