インタビューシリーズ第10回 平松昌子さん

平松昌子さん

認定NPO法人日本BPW連合会理事長)

Picture of Masako Hiramatsu

JWLI創始者の厚子・東光・フィッシュ(写真中央)と日本BPW連合会のスタッフと共にボストンを再度訪問した平松晶子さん(写真左)

 

★☆★平松昌子さんは、JWILプログラムが立ち上がった2007年に6週間ボストンに飛び込んでくださいました。平松さんのチャレンジ精神と勇気なくしては、今のJWLIもなかったかもしれない大切な記念すべきJWLI第一期生です!★☆★

 

1、何をやっているか/やってきたか

女性が、女だからという理由で差別を受ける現状を何とかしなければ、というのがそもそもです。

1960年代、「男は外で、女はうちで」が常識という時代、友人の紹介で働き出した職場(民放)には、女性の「30歳定年・結婚退職」を明記した就業規則があったのです。それで、「組合の執行委員になることで組合の運動方針決定に参加し、就業規則の改正を実現できました。この時学んだのは、「自分で動かなければ物事は変わらない」ということでした。

そのころ出会った先輩から「有職婦人クラブ」という団体を紹介されたのです。 これは、「働く女性たちの環境改善」という目標を掲げて1930年代に、アメリカで生まれたBusiness and Professional Women (BPW)です。 戦後、国連創設に際し経済社会理事会から諮問的地位を得て活動の場を広げ、日本ではNHKや労働省の女性リーダーたちが中心となって活躍していました。

BPWが日本で活動を始めて60年。現在は、男女の賃金格差解消を求めてのイコール・ペイ・デイ・キャンペーン、日本の男女格差を理解してもらうために世界経済フォーラムが公表する「GGGI(男女格差指数)の紹介」、職場等での嫌がらせを根絶するためのハラスメント相談員の育成、次世代育成に向けて「国連女性の地位委員会への若者の派遣」、「ヤングスピーチコンテスト」等を行っています。この他、日本BPW連合会は、全国に16の地方クラブがあるので、それぞれの地域の女性に関する課題を取り上げるなどアクティブで現実に結びつくような勉強会もやっています。

また、女性の政治参画推進も同じく重要な課題なので「クォータ制を推進する会」の幹事団体にもなっており、女性議員を増やすために国会議員への働きかけや、議員候補者の掘り起こしとして「政治女子育成講座」などの活動にも積極的に進めています。

 

2、これからのビジョン

日本に根強く生きる男性中心という発想を変え、女性がしっかりと政策決定を担うように社会の制度や体制を変えていくことです。人口比が男女で50:50なのだから、「おっちゃん」の発想で出来ている今の社会は、正しい民主主義とは言えません。民主主義は、市民それぞれの代表で行うものです。政治は男のものと信じている男性たちも、人口の半分が女性だから議員の半分を女の人にするのは何がおかしいですか?と言うとね、男は偉い、女は従うものと信じている粘土層のおっちゃんたちも、結構認めざるを得ないようです

これまで、女は損をしてきたと思います。職場でも、社会でも、家でも。かつて男たちで決めてきた社会規範が、なぜ正しいとされているのでしょうか。明治以来の男性中心の労働形態、昭和以降の男性による長時間労働をたたえるような「24時間働けますか」の役割分担は、必ずしも正しくはない。特に日本は農耕民族なのだから、元々女性だって働いてきました。男性が狩りに出て行って、女性が家に閉じこもっていたなんてことはありません。それに今は、生き方も、仕事の仕方も多様性を尊重する時代。多様性を尊重するなら男の意見だけが通るのはおかしい。女が強くならなきゃとか、そういうことではなくて、女性と男性が違いを認め合うことで、新しい活動の姿を創る。それがないとこの時代の変化についていけていない、日本は大きな男女格差を温存しているから今、世界の進展から取り残され落ち込んでいるのです。

 

3、今困っていること、助けを必要としていること。誰と/どことつながり、どんなアクションを一緒にやりたいか

女性で自分は損をしていると思っている人と意見交換をしたいです。話をすると、こちらも智慧が出るし。特に、地方で何かやろうとしている人ともつながっていきたいですね。そして世界の女性たちとも。日本BPW連合会は全国に16の地方クラブがあるので、会員になってもらってもいいし、何か一緒にイベントをやってもいいし。人数が多くなればややこしい部分もあるけれど、いろんな意見や情報が集まることの力は大きいです。もう一つ、資金調達をやらなくてはね。

 

4、提供できるスキル/強み

  • アジテーション!皆が求める方向を感知して、方向性を揃えること。20代の時に女性若年定年制反対で、執行委員として組合運動をした名残です。
  • 働く女の歴史を語れます。ほとんどの時間をメディアの世界で働き続けた経験から「日本における働く女性の歴史」を語れます。
  • 妥協せずに在り方を変えるアイデアを見つけるブレインストーミングができます。例えば、お茶くみが嫌なら、しなくて済む方法を探し出すこと。お茶くみをやめる代わりにコーヒーメーカーを導入するなど。その際、コストも検討する。常によりクリエイティブな方法を探すことが大好きです。

 

5、楽しい質問(趣味、好きな映画、嫌いな食べ物など)

毎日楽しくビールが飲めること!そして、運動(テニス)ができること。

 

6、インタビュアーYuki’s Comment

今回は、現在理事長をつとめる団体での活動に焦点を当ててお伺いしましたが、何を隠そう平松さんは「ベトナム戦争のさなかに現地入りし、取材をした唯一の日本人女性記者」という、放送における女性ジャーナリストの草分け的存在です。著書『女がメディアで生きる』を読ませていただきましたが、女性の働く権利のために職場の就業規則を変えたりと平松さんが本当に実践するリーダーである様がうかがえました。実は、私自身も過去4年間、女性の地位委員会への出席と現地でのイベント開催のためにニューヨーク国連本部に平松さんとご一緒してきました。直前に足を骨折したにもかかわらず、松葉杖で国連に現れた平松さんを見ていたのですが、彼女のバイタリティのルーツを著書を通しても改めて知ることができ、インタビューでもたくさんのパワーをもらうことが出来ました!